「荻窪にとんでもなく安いフグ料理の店があるんですって」
飯友マーリィが、今思い出したと言わんばかりにパスタフォークをピタリと止める。唐突な上に“安い”と“フグ”が結びつかない。「とんでもなく」のおまけ付きともなれば、いったいどんな裏事情が…と疑うのも無理はない。WEB掲載の価格帯(食べログ)は【1,000〜1,999円】。しかも、高級食材と名高いスッポンの提供もあると言う。「フグとスッポンが安いの、なんか怖くない?」募る不安に同意を求めたが「行ったらぜひ感想を教えてね」と言われてしまった。お前は行かないのかよ…マーリィ。
道連れ仲間を召喚〜怪しげな店への冒険〜
RPGは徐々に仲間を増やす方が好みだ。だけど怪しげな居酒屋は別。一人は心細い。せめてもの道連れにと、お酒大好き「ゆでたまご」と、切れ者「オダ」を召喚。「フグの骨酒って気になるなぁ〜」と、ウキウキのゆでたまご。「僕、こう見えて結構汚いとこ経験してるんですよ」とドヤ顔のオダ。心強い。
明かりがついていれば営業中
環八沿いに歩いて15分、見ればすぐわかるボロ提灯。圧倒的オーラに思わずひるむ。仲間がいてよかった。明かりがついていれば営業中。
いらっしゃい〜」掛け声と同時にパッと目に飛び込んでくる、短冊短冊短冊短冊。どれもこれも価格がおかしい。
もみぢに来たら食べておく逸品
フグ刺し(350円)を注文。出てきたフグ刺しはなんだか分厚い。一生懸命さが伝わるフグ刺しを、さっそくみんなでいただきます。「へぇ〜フグだ!」「確かにフグですねぇ」「あれっ、ちゃんとフグじゃん」次々飛び出る感想。そう、味の評価よりも先に、真偽の感想が飛び出る店、それがもみぢ。
刺身と同じく、価格破壊のフグの唐揚げ。あっさりとした白身の味に、香ばしい衣が絶妙なマッチ。「ボリューミーになって見栄えがいいから」と、カサ増しに混入されている鳥の唐揚げ。フグも気まずそう。というか、油断すると鳥の唐揚げを食べながら「フグ唐揚げ最高!」などと言ってしまい、バカ舌が露見する恐れあり。かっこつけデートで赴く方はご注意を。
ゆでたまご期待の「フグの骨酒」は骨の焦げた香ばしい香りと、安焼酎のハーモニー。チンっ♪と弾ける電子音と同時に熱々提供される。ゆでたまご、大満足。もみぢに来たら毎回注文する、ここでしか飲めない一品だ。
名前からは想像もできないフルーティーな味わいの「スッポンの血のワイン割」。心なしかムラムラと力が湧き上がる。おかわりした。ゆでたまごとオダは飲まなかった。
スッポンとのふれあいコーナーもあり。守りたい、この笑顔。
結局あれもこれも美味しい
とにかく、見た目で下がった期待値を一気に盛り返す数々の品。特にスッポン雑炊とうどんは別格なので訪れたら必ず食べておきたい。ただし、人数分は絶対に頼まないこと。一人分で2人前以上出てきてしまう。
全てはご主人のさじ加減。食べたい品も厨房事情次第。ものすごく気になった「もみぢオリジナルチャーハン」は「中華屋の方が美味いよ〜」とまさかのオーダー拒否(鍋の都合)。狭い厨房を右へ左へ奥へ手前へと、せわしなく動き回るご主人を見ていると、協力したくなる不思議なお店。住めば都、飲めば天国。会計は散々飲み食いして2200円/一人でした。驚愕。
平日だけど、フグ刺し肴に一杯もみぢでやりませんか。
フグ料理と骨酒が楽しめる名店
・住所 東京都杉並区荻窪2-24-10
・TEL 03-3393-2545
・営業時間 18:00〜27:00(不定休:日曜営業)
・平均予算 1,000〜2,999円
・備考 夏季は世界の山に登山のため1ヶ月以上休業。
<向く人、向かない人>
衛生面が気になる人は全く向かない。細かいことは気にしない、美味しければ関係ない、珍スポット好きにはたまらない名店。居酒屋界のインド的存在。
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